ピアニストを撃て/フランソワ・トリュフォー (3)

+概要+
1960年公開のフランス映画。
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:ピエール・ブロンベルジェ
脚本:フランソワ・トリュフォー、マルセル・ムーシー
原作:デイヴィッド・グーディス
出演:シャルル・アズナヴール
撮影:ラウール・クタール
編集:セシル・ドキュジス

トリュフォー、2作目の長編映画。アメリカの小説を映画化した作品。

+あらすじ+
かつて人気のピアニストだったシャルリは、今はしがないバーで夜毎演奏をしている。そこに2人の男に追われた厄介者の兄が押しかけてくる。シャルリは兄を助けるが、男達に狙われる羽目に。店で働くレナも恋人に間違われ、男達に捕われる。追手から逃れる中、距離を縮めていくシャルリとレナ。しかし、悲しい過去が原因でシャルリは恋することを恐れていた。

+感想+
OPから軽快で人形劇のような音楽と共に鍵盤の裏側(名称わからない)が映し出され、トリュフォーが意識したというおとぎ話のような雰囲気が漂う。

その後、突如暗闇での争いが映し出され、シャルル・アズナヴール演ずるシャルリが登場すると何とも言えない不思議と陰鬱で不穏な未来を予期させるような空気が流れ始める。それでも、所々謎のダンスを繰り返す2人組が登場したり、コミックソングのような歌を歌うシーンを入れたりと遊び心を忘れていない。(歌のシーンは正直ちょっとテンポを崩していたように思うけど)

レナが登場し、シャルリとの微妙な距離感を表現する手のクロースアップ、さりげなく組む腕などで恋に臆病なシャルリが映し出される。そして兄を探す追っ手に誘拐される等の攻防を交えつつ(この誘拐犯と車の中で話が弾んでいくのも面白い)、彼が恋に臆病になるに至った悲惨な過去が交差しながら、遂にはようやくレナを愛し始めることが出来そうになった矢先、またその愛を失ってしまう。

最後には、また同じ場所で同じようにしがないピアニスト生活を続けるシャルリの淡々とした表情が哀愁を誘う。前作「大人は判ってくれない」等の作品でもそうだけど、トリュフォーの映画は押し付けがましい表現がなく、出てくる登場人物は見え透いた感情の吐露によって同情を誘うようなことはない。ただ淡々と現実を受け入れる姿が哀しみを表現している。

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