突然炎のごとく/フランソワ・トリュフォー (4)

+概要+
1961年公開のフランス映画。
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:マルセル・ベルベール
脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン・グルオー
原作:アンリ・ピエール=ロシェ
出演:ジャンヌ・モロー
   オスカー・ウェルナー
   アンリ・セール
撮影:ラウール・クタール
編集:クロディーヌ・ブーシェ

トリュフォー、3作目の長編映画。批評家時代より何度も本作に言及するなどトリュフォーは強く惹かれており、元々は長編映画の1作目は「大人は判ってくれない」ではなく、本作の予定だったそうだが、監督としての力量に不安があったトリュフォーは先送りにした。

+あらすじ+
オーストリア人のジュールとフランス人のジムは、意気投合し大親友になる。恋人の居ないジュールは、2人が心惹かれた女神像に似たフランス娘のカトリーヌに出会い恋に落ちる。彼女は自由奔放で、ジムは独占出来ない女だと忠告するがジュールは彼女と結婚。その後戦争で疎遠となった2人だったが、ジュールの別荘で再会。一見落ち着いた家庭だったが、実はジュールは彼女を失うことを酷く恐れていた。再会でジムはカトリーヌに惹かれていることを確信。彼女を失いたくないジュールはジムに彼女と結婚するように言う。

+感想+
軽快な音楽とジュールとジムの和気あいあいな様子、カトリーヌのあけすけな笑顔などコメディタッチに始まる。しかし、トリュフォーの他の作品同様、次第に作品は悲劇の要素を強めていく。

ナレーションで全てを淡々と素早く語るスタイル。この作品はスピード感がすごい。映画は監督の中で流れている時間が表れるものだという話があるけど、トリュフォーはとても早口だったそうだし、彼の中に流れていた時間もこの早さなのだろう。本作は編集もとても斬新で、特にカトリーヌの顔を女神像のように横から前から様々な角度から撮りモンタージュのように組み合わせたシーンが印象的だ。

タイトルにもなっている「炎」。これは文字通り愛を表している。
まずはジムがカトリーヌの引っ越しを手伝うシーン。要らない紙を焼こうとしたカトリーヌのスカートに火が燃え移る。すぐさまジムが火を消すがここで愛の火種が生まれたことを示す。最初に観た時には、なんとしょぼい炎シーンなんだと思ってしまったけど、見直した際に後々にこの「炎」というポイントが繰り返されていることに気づいた。
映画館での映画。最後には、炎に焼かれる2人の遺体。身を焼く程の愛を内に抱いた女性とそれに魅せられた男達。炎はそれを見事に表現している。

それから、カトリーヌの歌う「つむじ風」。ハワード・ホークスのような劇中に突如登場する歌唱シーン。正直、「ピアニストを撃て!」で冒頭バーの中でコミックソングを歌うシーンは冗長な印象を感じてしまったけど、本作では成功していると思う。ジャンヌ・モロー自身の魅力とカトリーヌが融合され特別な時間を作り出している。結局は遺灰を風の中に撒くことは出来なかったという結びがされていたけど、バックで流れる「つむじ風」の音楽は彼らの風に巻かれて消えていったような人生を思わせ、物哀しい気持ちにさせる。

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