柔らかい肌 / フランソワ・トリュフォー (6)

+概要+
1964年公開のフランス映画。
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:マルセル・ベルベール
   アントニオ・ダ・クーニャ・テリス
   フランソワ・トリュフォー
脚本:フランソワ・トリュフォー
   ジャン・ルイ・リシャール
出演:ジャン・ドサイ
   フランソワーズ・ドルレアック
撮影:ラウール・クタール
編集:クロディーヌ・ブーシェ
音楽:ジョルジュ ・ドルリュー

新聞の三面記事に掲載された実際の記事を基にしている。その他、トリュフォー自身は、タクシーで見かけたキスするカップルを見たことに着想を得たと語っている。

+あらすじ+
著名な評論家で既婚者のピエール・ラシュネーは、講演のためリスボンに向かう飛行機の中で美脚のキャビン・アテンダント、ニコル・ショメットに出会う。同じホテルに宿泊していた2人は惹かれ合い、関係を結ぶ。パリに戻ってからも逢瀬を重ねる2人。一方で妻は浮気を疑い、夫婦関係は緊張感を帯びていく。

+感想+
OPクレジットでは手の重なりがクロースアップで映され、いきなり濃厚な愛の物語といった雰囲気。そして冒頭の車での疾走シーン。既にこの辺りから、トリュフォーの敬愛するヒッチコックの影響が表れる。運転手の顔・ハンドル・POVのモンタージュ。どこか暗い緊張感をもたらしている。

そして飛行機の中ではトリュフォーが幾度となく撮り続けた、脚の映像。カーテン越しにハイヒールを履き替えるフランソワーズ・ドルレアックの脚は、秘めた欲望・官能を感じさせる。その後も眠るニコルの脚からストッキング・ハイヒールを脱がせるラシュネーというただのベッドシーンよりも濃厚なワンシーンや、脚を強調した写真を撮るラシュネーなどこの映画は脚がもたらすセクシーさに彩られている。

ホテルのエレベーターの中での2人の出会いは、またもやヒッチコック風。「映画的時間の長さ」が適用されているので、行きの2人きりのエレベーターは長く引き伸ばされている。2人があまり表立った感情は見せないものの、次第に互いが気になり意識している様子が見事に表現される。

実際の筋だけを捉えると、不倫を悟られないようホテルもグレードの低いところに匿ったり妻にも自分からは離婚を切り出すことが出来なかったりと小心で軽薄な男の滑稽な話といったものだけど、ヒッチコックに影響を受けたサスペンスの手法を取りつつ、時折見せる官能シーンなどを交え不倫愛を語ることで、暗く濃厚なラブストーリーになっている。

ちなみに、ネコが田舎のホテルの外に出した残飯を食べに来るシーンは上手くいかず、何度も撮り直したよう。その体験が『アメリカの夜』で再現されている。

「視線が重要な映画。感情は表情ではなく、環境で表現した」(トリュフォーインタビューより)

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